2001年11月5日

肝臓にシジミ、科学的効能裏付け

 








シジミ抽出エキスがアルコール性肝機能障害や急性アルコール中毒に実際に効果があることが、肝機能低下者やマウスを使った県産業技術開発センター(青森市)と食品卸業・福島商店(同)の共同研究で分かった。古くから酒のみに良い、二日酔いに効くなどと言われてきたシジミの効能を、科学的に裏付けた形。研究成果は既に特許の出願を終え、現在、審査請求中。研究員たちは「シジミの持つ可能性はまだ広がりそう」と一層の研究進展に期待を寄せている。

 同センターによると、シジミの共同研究は一九九八年度からスタートした。十三湖産のヤマトシジミから抽出、乾燥して粉末化した同社製品を用いて、アルコール性肝機能障害のある九人に、比較のための健康者一人を加えた十人に対して摂取試験を行った。

 その結果、肝機能障害の指標であるγ−GTP(単位・IU/リットル。正常値は59以下)が1189だった人が、四週目で648、二十週目には258まで大幅に減少するなどの改善効果が見られた。

 急性アルコール中毒に関する研究では、シジミを冷凍処理することによりシジミエキスに含まれているアミノ酸の一種「オルニチン」が増え、そのエキスを用いることで効果が上がることを発見した。

 一方、マウス六匹ずつに大量のアルコールを投与する実験では、シジミエキスを投与しなかったマウスが三日間ですべて死亡したのに対し、冷凍処理でアミノ酸を調整したシジミエキスを投与したマウスは五匹が生存し、生存率が高まることが確認できた。

 同センターと同社は、研究成果を日本栄養・食糧学会で発表。肝臓に対するシジミの効果についての科学的な立証は「同学会などで発表された例は、ほとんどない」と同センターは話す。

 また、シジミの冷凍処理方法やアミノ酸の含有割合を調整したエキス、製造方法について、二〇〇一年三月に特許の審査請求を行った。

 同センターの内沢秀光主任研究員は「研究によりシジミエキスが肝機能改善やアルコールの影響を和らげる効果があることが、科学的に証明できた」とし、「シジミ特有の成分については解明されていない部分も多い。研究を進め、シジミの良さをもっと引き出していきたい」と話していた。

※写真は十三湖のヤマトシジミを煮て、エキスを抽出する研究員たち=青森市の県産業技術開発センター